禁断の果実

14.別れの危機 -前編-









マリナは自分の部屋へと戻った。

どうするのが最善なのか、どうすれば刹那と一緒にいられるのか・・・。

「・・・だめ・・どうしたらいいの。」

何か策を考えなければと、この状況をどうにかしなければと、マリナは一生懸命考えようとするが

動揺してしまっているせいか、何も思いつくことができない。

「・・・私には・・分からないわ・・・。」

マリナの頬を涙がつたう。

そしてその場にしゃがみこみ、ベッドにうつぶせて泣きはじめたのだった。









マリナはいつのまにか眠ってしまっていた。

コンコン

誰かがドアを優しく叩く。

しかしマリナはノックに気付かず眠り続けている。

キィッと、ドアをゆっくりと開ける音がする。

「・・・マリナ?」

聞きなれた声でマリナは起きた。

目覚めたばかりで視界がかすむ。

目をこすり、部屋を見渡すと誰かがそこにいた。

「・・・だれ・・?」

窓からの月明かりでその人物が照らし出される。

「・・刹那・・・?」

「あぁ、俺だ・・・ペンを俺の部屋に忘れていたようだったから持ってきたんだが・・・。」

月のぼんやりとした光の中、刹那はマリナの目元が赤く腫れているのに気が付く。

「・・泣いて・・いたのか・・?」

寝起きで中々頭が回らないマリナだったが、さっきの祖父の話を思い出した。

ただただ刹那に心配させたくない一心で、マリナは否定する。

「やだ私ったら・・・こわい夢でも見てたのね、きっと。」

そう言って力なく笑ったマリナ。

それを見て刹那が何も気付かないわけがなかった。

「何があったんだ?」

「・・・何もないわ・・だから・・・安心して。」

マリナは何か隠してる、そう刹那は直感した。

刹那はしゃがみこんでいるマリナの横に行くと膝をつき、彼女の頬に優しく触れる。

そして顔を近付け、瞳をじっと見つめた。

「俺では・・・支えにはなれないのか?」

マリナは刹那とのあまりの近さにどぎまぎしながらも、それは違うと、強く否定する。

「そんな事はないわっ。」

「なら話してくれないか?」

「・・それはっ・・・。」

マリナは迷った。

そして刹那の目を見れずにいたマリナだったが、ふと刹那の方を見て、彼と目が合ったのだった。

真紅の瞳でマリナをまっすぐ見ている刹那と。

その途端、マリナは刹那にはかなわないと思った。

こんなにも自分にまっすぐでいてくれる刹那に、自分もこたえたいと思った。

「・・・分かったわ、刹那・・・。」

「話してくれるのか?」

「えぇ。あなたの態度に・・・気持ちに・・・私もこたえたいの。」

「ありがとう、マリナ。」

そう言って刹那はマリナの額に、そっと口付けた。









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08.12.30