禁断の果実
11.甘い蜜 -後編-
「刹那ッ、はやく離してっ。」
刹那はノックをした人物を恨めしく思いながらも、仕方なく腕の力を緩めた。
そしてマリナはバッと刹那から離れ、自分の乱れた服装を正して言う。
「ど、どうぞ。」
ドアが開くとメイドが姿を現した。
「失礼します。お嬢様、おじいさまがお話があるそうです。勉強が終わったら部屋に来るようにとの事です。」
「おじいさまが?」
「はい。」
「何の用かしら・・・・・分かりました。後で行くと伝えてください。」
「承知いたしました。それでは失礼します。」
そう言ってメイドは去っていった。
何にせよ刹那から逃れる事ができたのでマリナはメイドに心の中で感謝すると、刹那の方を向き叱るように言う。
「もうっ!刹那、ちゃんと勉強に集中してっ!」
「・・・・・マリナは嫌か?」
「えっ?」
「・・・俺はマリナに近づきたい・・・触れたい・・・。」
そう言いながら刹那は椅子から立ち上がりマリナの方へ歩み寄ると、自分の手をゆっくりとマリナの頬にそえる。
「俺は何度でも言う・・・・・マリナ・・・愛してる。」
そして刹那はマリナに優しく口付けをした。
「・・・・・マリナはどうなんだ?」
刹那は手をマリナの頬にふれたまま、顔を近づけたまま言う。
「・・・私・・私も刹那のことが好きよ・・・ただ・・・その・・・・。」
マリナは頬を紅く染めながら、かすれそうになる声を振り絞って出すかのように言う。
「・・・本当に好きだから・・だから・・・自分の気持ちにいっぱいいっぱいで・・・。」
刹那はマリナの言葉を、マリナの全てを受け入れるかのような眼差しで彼女の瞳を見つめ続ける。
「それで・・・先に進もう進もうとする刹那に・・・ちょっと戸惑ってしまってるの・・・・・。」
刹那はマリナの言葉を全て聞き終えると、今度はマリナの頭にポンッと手をのせ優しく微笑んだ。
「俺が先走りしすぎたのかもしれないな。」
「・・・刹那・・・。」
「もっとゆっくり・・・進もう。」
そう言って刹那はマリナから離れ、椅子に座った。
「勉強の続きを教えてくれないか、マリナ。」
「え?・・・あ、えぇそうね。」
そして二人は再び数学の問題に取り掛かったのであった。
刹那が自分に合わそうとしてくれた事に、マリナは刹那の愛情を感じた。
そしてそれと同時に、刹那に合わせる事が出来ない自分を恥ずかしく思った。
マリナは罪悪感を感じずにはいられなかった。
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08.03.27