禁断の果実

12.Trouble









「じゃあ今日はここでおしまいね。」

勉強を終え、マリナが机から離れようとした時だった。

「マリナ」

「なに?」

「そういえばこの間はどこに行ってたんだ?」

「この間って?」

「マリナが初めて俺に好きだと言ってくれた日だ。」

「えっ!?」

マリナが初めて刹那に好きだと言った日・・・それは二人が体を重ねたあの日のことだ。

刹那は真顔で聞いているあたり、マリナをからかうつもりで言ってるのではないのだろう。

しかしその日どこに行ったのかの問いの返事を考える以前の問題として、

例の出来事を思い出してしまい何だかマリナは気恥ずかしくなってしまう。

そのせいで頭から蒸気が出るのではないかというくらいにマリナの頬があかく染まった。

「マリナ・・・?」

「えっ?!あ、えっ!?何だったかしら?!えーと、えーと・・・。」

マリナは例の出来事を考えないように考えないようにとするのだが、

1度頭によぎっってしまったことというのは中々頭からはなれにくいものだ。

おかげでマリナは刹那の質問が何だったかさえ分からなくなったのだった。

そんなマリナを見て、刹那は苦笑しながら言いなおす。

「どこに行ってたんだって聞いたんだ。」

「あっ、そ、そうだったわね!えーっと、そうだわ!たしか、その日はグラハムさんと・・・。」

「グラハム・・・?」

刹那の声色が変わった。

しかしマリナは例により少々混乱気味で、それに気付かずに言葉を続ける。

「そう!グラハムさんとお食事をしたのよ。それで、えーと、帰り際にキスを・・・。」

キスをされそうになった、そう言いかけた所でマリナはようやく我に戻る。

「キス・・・したのか・・・?・・・・・あいつと・・・?」

しまった、とマリナは思った。

時すでに遅しだったが、手で口を抑えずにはいられなかった。

こういうことは恋人に言うべきではない。

「あ・・・ち、違うの、刹那・・・!キスは・・その・・・されそうになっただけ!キスはしてないわ。」

「キスはしてない・・・?じゃあキスの他に何かしたってことか・・・?」

「そういう意味じゃなくてっ・・・・・刹那、信じて・・・本当に彼とは何も無いの。」

刹那はゆっくりとマリナに近寄ると左手を彼女の腰に、そして右手をマリナの頬に優しく添え、

体も顔もこれ以上近寄るのは不可能だというくらいに近づける。

「本当に・・・何もなかったのか・・・?」

「えぇ、本当に何もないわ。」

あまりの至近距離にマリナはどぎまぎしながらも、刹那にだけは誤解されたくない、その一心で刹那の目を見てしっかり答えた。

「・・・・・分かった・・・俺はマリナを信じる。」

そう言って刹那はマリナのおでこに唇を落とす。

「刹那・・・信じてくれて本当に嬉しい・・・・・あなたにだけは・・・誤解されたくなかったの。」

二人は互いの絆を、想いを確かめるようにあつい抱擁をかわした。

「じゃあ私はおじいさまの所に行ってくるわね。」

「あぁ。」

そうして二人は密着していた体をはなした。

また、刹那はマリナのために部屋のドアを開けてやる。

そしてマリナが部屋から出ようとした時だった。

刹那は腕を引っ張られ、バランスを少しくずしかけたと同時に、頬にやわらかい感触を覚える。

そう、マリナが刹那の頬にキスをしたのだ。

「・・・っ?!」

「本当にありがとう、刹那・・・・・おやすみなさい。」

これは、刹那がマリナのペースに合わせると言ってくれた事、そして信じてくれた事への感謝の言葉だった。

マリナはほんのり頬を染めながらニコッと笑う。

「・・・・・あ、あぁ・・・おやすみ・・・。」

パタン

マリナが部屋を出て行きドアが閉まった。

いつもが攻めの人間というのは、いざ自分が攻められると弱いものだ。

刹那もその例外ではなく、刹那は数秒間ぼーっとした後、顔が急にあかくなるのだった。









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08.04.03