禁断の果実

2.嫉妬









ある日の平日の事だった。マリナはいつもより遅くに帰宅した。

刹那はマリナが帰宅した事に気付き、自分の部屋から出て玄関の方へと向かった。

すると玄関先での会話が聞こえてきたので、マリナが他の誰かといると分かり足を止める。

「今日は家まで送って頂いて有難うございます。お茶でも飲んで行きませんか?」

「いえ、そうしたいのは山々ですがこれからまた用事がありまして。マリナさんのお気持ちだけ受け取っておきます。」

若い男の声だった。刹那は二人に気付かれないようにそっと玄関をのぞく。

そこにはマリナの他に、金髪でキリッとした顔立ちの男が立っていた。

「そうですか。それではお気をつけて帰ってください。」

「では、また明日。」

そう言うとその男はマリナに微笑み、そして去っていった。

「お帰り、姉さん。」

「ただいま。」

「今のは・・・?」

「あぁ、グラハムさんよ。大学のOBで色々と教えてくれるの。」

「・・・そう。」

今までマリナの帰りが遅くなってしまった事は何回もあったが、こうして男と帰ってきたのは初めてだった。

刹那はモヤモヤとした重い塊のような感情が沸いてきたのを感じた。

「今日は遅くなっちゃったわね。今日は勉強は見なくてもいい?」

マリナの帰りが遅くなって勉強を見てもらうのをパスする事は今まで度々あったし、刹那もそれはそれで別に気にしなかった。

しかし、あの男のせいで自分とマリナとの時間を取られるのが何となく刹那は気にくわなかった。

「・・・いやだ・・・。」

「え?」

予想外の答えにマリナは思わず聞き返してしまう。

「・・・今日は・・・勉強をみてくれないといやだ・・・。」

刹那は少々うつむき加減で言う。

「しょうがないわね。じゃあ部屋で待ってなさい。着替えてくるから。」

マリナは刹那に優しく微笑み、自分の部屋へと行くのであった。









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