禁断の果実

4.ふくれあがる感情









しばらくしてから刹那は腕の力を緩め、マリナを自分の腕の中から解放してやる。

「すまない・・・もう大丈夫だ・・。」

マリナはまだ心配そうな顔を刹那に向けながら言う。

「本当に大丈夫?」

「あぁ。」

「汗をかいたみたいだから服を着替えなさい。」

そう言われて初めて刹那は自分がじっとりとした嫌な汗をかいていた事に気が付いた。

マリナはベッドからはなれ、刹那のタンスから新しい服を取り出して刹那に手渡す。

「私はお水を持ってくるわね。」

「・・分かった。」

いったんマリナは刹那の部屋から出て行き、刹那もベッドからおりて着替え始める。

―――俺は・・・マリナの事が・・・。

刹那は着替えながら考える。

自分がマリナのことを好きだという事実をあっさりと受け入れられるのは、

もしかしたら心のどこかで分かっていたからかもしれない、そう刹那は思った。

そしてさっきの勉強の時の自分の態度を思い出し、我ながら幼稚だなと自嘲したのであった。

それと同時に、あんな態度を取ってしまったにも関わらず、

こうして自分のことを心配してくれるマリナに対する愛情と罪悪感が刹那の中で増していった。

コンコン

刹那の部屋のドアがノックされる。

「もう着替え終わった?」

「あぁ。」

水の入ったコップを持ったマリナが部屋に入ってくる。

「どうぞ。」

二人はベッドに腰掛け、刹那は水を飲み、マリナはそれを横で見ている。

「・・・ありがとう。」

刹那が水を飲み終えてからそう言うと、マリナは無言で微笑みを刹那にかえす。

「もう大丈夫だから・・・姉さんももう寝なよ。」

「分かったわ。」

そしてマリナはベッドから腰をあげて、刹那の部屋から出て行こうとする。

「姉さんっ・・・。」

マリナは足を止め、刹那の方を振り向く。

「・・・さっきは・・すまなかった・・・。」

マリナはいつもの優しい微笑みを刹那に向けて言う。

「私の方こそ刹那が言いたくない事を無理に言わせようとしちゃったみたいで・・ごめんなさいね。じゃあ・・おやすみなさい。」

「・・おやすみなさい。」

パタン

マリナが部屋を去り、部屋のドアが閉まる。

―――姉さんは悪くない・・・なのに・・何で俺なんかに謝るんだっ・・・。

刹那の中に再び、マリナへの愛情と罪悪感が沸いたのであった。











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