禁断の果実

7.ゆれる心









マリナは何が一体どうなってるのか考えをめぐらそうとするのだが、

ただ頭の中がごちゃごちゃとするばかりで整理がつかない。

―――『好きだ・・マリナ・・・愛してる。』

しかしその言葉を聞いたとき、得体の知れない感情が彼女の心に湧いたのは事実だが、

いつもと違う彼がこわかったというのも事実だった。

彼女の涙は、彼に対する恐怖心とその感情によって出たものであった。

だがマリナは頭の中がぐるぐるとしながらも、薄々、その得体の知れない感情の正体に気付き始める。

―――・・でも・・・そんなはずっ・・・。

マリナは自分の感情を否定し、抑圧した。

―――今日の事は忘れよう・・刹那は私の・・弟だもの・・・。









刹那は自分の部屋に戻っていた。

マリナの涙を流した顔が刹那の頭から離れない。

―――俺は・・姉さんを・・困らせただけだっ・・・。

自分の欲望を抑え切れなかっただけでなく、マリナに怖い思いをさせてしまったのだと思うと、

刹那は自分が情けなくなり、思わずひとりごちる。

「・・俺は・・・何をやっているんだっ・・・。」









そうして、この日も夜が更けていく。

闇が二人をのみこみ、全てを無に帰すように・・・。









そして夜が明けた。

マリナはいつものように、使用人が用意してくれている朝食を食べにダイニングルームへと向かう。

そこに刹那の姿は無かった。

「おはようございます、マリナ様。」

使用人がマリナに気付き挨拶をする。

「えぇ、おはよう・・・刹那は・・?」

「刹那様は先にお出かけになりました。」

「そう・・。」

そう言ってマリナは朝食をとりはじめたのだった。

今日はグラハムと会う約束をしていたため、朝食を食べ終わると

マリナは自分の部屋へと戻り出かける準備を始める。

マリナは準備を終え家を出ると、車にせもたれるようにして既にグラハムが待っていた。

「すみません、お待たせしてしまいましたか?」

「いえ、今来たところです。では行きましょうか。」

そして二人の乗った車は遠くへと消えていった。









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