禁断の果実
8.蒼
夕暮れ時になって刹那は帰宅すると、まだマリナが帰ってきてない事に気付いた。
階段をのぼり自分の部屋に入る直前に、刹那はマリナの部屋のドアを見つめる。
―――・・マリナ・・・。
マリナのことを考えるだけで胸が苦しくなった。
―――抱いてはいけない・・感情・・だったのだろうかっ・・・。
刹那は軽く瞳をとじて、心を静める。
そして再び瞳を見開いて自分の部屋へと入ったのだった。
太陽もすっかり沈み辺りが暗くなった頃、
マリナを載せたグラハムの車が彼女の家の前に止まり、二人は車をおりた。
「今日はどうもありがとうございました。また家まで送って頂いてしまってごめんなさい。」
「いえ、お気になさらずに。それに、わたしの方こそマリナさんと一緒に時間を過ごせて良かった。」
「じゃあ、おやすみなさい。」
そう言ってマリナが家のドアに手をかけようとした時だった。
マリナの腕をグラハムが後ろから引っ張り、キスをしようとした。
「いやッ・・!」
寸でのところでマリナは顔をそむけて何とかキスを逃れる。
「あ・・・えっと・・ごめんなさい・・・ッ。」
マリナは顔を赤くしながらうつむき加減で言った。
「・・いえ、謝らないで下さい。悪いのはわたしの方だ。どうもわたしは我慢弱くて。」
するとグラハムはマリナの腕を離してやり、続けて言う。
「ではおやすみなさい。」
「・・はい・・・おやすみなさい。」
そしてマリナは家の中へと去り、グラハムも車に乗り込み、その場を去っていったのだった。
マリナは家に入ると、しばらく玄関のドアに寄りかかったまま呆然としていた。
そして忘れようとしていた刹那との昨日の出来事を思い出してしまう。
―――・・あの事は・・忘れないとっ・・・。
しかし今のグラハムとの事で、否が応でも刹那への自分の気持ちを再確認させられてしまったのだった。
それに、たとえ血の繋がっていない姉弟でも自分が弟を好きだという事にマリナは反発を覚えずにはいられない。
―――・・刹那とはっ・・今までどおりに接しなきゃ・・・。
だが、自分の気持ちを知ってしまった今、はたして今までどおりに接する事が出来るのだろうかという疑念が彼女に湧く。
そして頭の中がごちゃごちゃするばかりで、マリナは整理がつかなかった。
―――私は・・どうすればいいのっ・・・。
マリナはボロボロと涙を流し、走って自分の部屋へと戻っていったのだった。
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08.03.12