禁断の果実

9.果実が成熟する時









自分の部屋にいた刹那は、ドタドタとマリナの部屋に誰かが走って入っていく音を聞いた。

―――マリナ・・・?

昨日のことがあるにせよ、足音から察するにマリナの様子がおかしいと思い、

刹那は自分の部屋を出てマリナの部屋へと向かった。









コンコンッと刹那はマリナの部屋のドアをノックした。

ノックに気付いていないのか返事が無い。

「・・姉さん?・・・」

マリナはやっと刹那に気付き、ドア越しに返事をする。

「え・・あっ・・ごめんなさい・・今あけるわね。」

ドアが開けられ刹那が目にしたのは、目元を赤くしたマリナだった。

「姉さん・・・泣いてたのか・・・?・・・」

「あぁ・・気にしないで。もう大丈夫だから。」

そう言ってマリナは儚げに微笑んだが、それは無理して微笑んでるのだと刹那は分かった。

そしてマリナを刹那は抱きしめた。

「俺じゃ・・・駄目なのか・・?」

刹那はさらに力を込めて強く抱きしめる。

「俺は・・・姉さんの支えになりたいっ・・・。」

「前に・・・俺がうなされた時、姉さんが俺を支えてくれたように・・・俺も姉さんを支えたい・・。」

「・・せつな・・・。」

涙が出そうになるのを必死にこらえながら、マリナは刹那の名前を呼ぶ。

「俺は・・・姉さんを支える事すら・・出来ないのか・・?」

とうとうマリナは耐え切れずに、涙があふれ出た。

「違う・・違うのっ・・刹那・・・わたし・・・。」

マリナは自分の体を刹那から離し、顔をうつむかせて言う。

「・・姉さん・・・?」

「私・・気付いたの・・・でも・・・どうしたらいいのかっ・・・。」

刹那への愛情が抑えきれなくなり、マリナは刹那の方に顔を上げ、ついに口に出してしまう。

「好きよ・・刹那・・・。」

そしてマリナは自ら刹那に口付けをするのであった。

刹那は一瞬、時が止まったように感じた。

また、それと同時にマリナが自分の事を好きだと言ってくれた事実が刹那の理性を吹っ飛ばす。

刹那は唇を重ねたままマリナを再び抱きしめ、ベッドに押し倒した。

いったん唇を離し、刹那はマリナの涙を優しく手でぬぐってやる。

「愛してる・・・マリナ・・。」

そして刹那とマリナは、今度はお互いを確かめ合うように深く深く口付けをし、闇に溶けていった。









夜がまた更けていく。

全てを無に帰すように・・・。

だが、明けない夜は決してない。

必ずまた、陽はのぼる。









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08.03.12